『謎解き 広重「江戸百」』 原信田実
2016年 02月 08日
「大はしあたけの夕立」に一目惚れして興味を持った歌川広重。広重と言うと、「東海道五十三次」も有名ですが、この本を読んで、「名所江戸百景」(略して「江戸百」)の構図と色彩感に驚かされました。
本の表紙にもなっている「浅草金龍山(あさくさきんりゅうざん)」は、赤と白の対比が美しいというだけでなく、近景の提灯と、赤と白のコントラストだけで遠景の方に自然と目が行くようになっている気がして、凄いと思いました。柔らかそうな雪の質感も出てますよね。さりげないのに、ものすごいインパクトのある作品。本の巻末に、「江戸百」の作品一覧が載っているのですが、まるで、カメラのファインダーを覗いて見えた景色をそのまま浮世絵にしたかのような作品もたくさん出てきて、「こりゃなんだ?」となります。
広重の「江戸百」が、単に、構図をいじって遊んでいるだけの名所絵ではないというのが大きなポイントで、描かれた時代の背景に迫ってみると、「絵の制作と(地震などの江戸時代の)できごとが対応しているのではないか」と思えてきますし、制限された中で作品が作られたのだとするならば、「制作意図とは何だったのか」、「伝えたいメッセージが巧みに隠されているのではないか」などといった疑問が湧いてきます。そんな疑問を持ちながらこの本を読んでみると、作品への理解度が深まると感じました。
浮世絵に関心のある人はもちろん、「江戸百」を通して江戸時代を覗いてみたい、という人におすすめの一冊になってます。
by fresh-mango
| 2016-02-08 23:04
| アート・デザインを楽しむ
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